大阪地方裁判所 昭和58年(ワ)7770号・昭58年(ワ)8467号 判決
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【判旨】
「被告が本件事故のため、左小指挫創、伸筋腱断装、右胸部打撲症の傷害を負つたことは、原告らにおいて自認するところであり、<証拠>によれば、被告主張(三)1(1)(2)の事実(但し、同(三)1(1)のうち左腕部疼痛は除く。)が認められ、かつ後遺症として、左手小指の末関節を屈伸することができなくなつた等の症状が固定(昭和五九年三月一二日頃固定)したことが認められる。
被告は本件事故により左腕部疼痛の傷害をも受けた旨主張し、<証拠>を提出するが、右証拠によれば、左腕部疼痛は、本件事故より四か月を経過した際の、被告の主訴のみによる症状であることが認められ、前記認定の被告の本件事故による事故直後の受傷の部位、程度、右認定の左腕部疼痛の発生時期、訴えの内容などを総合すると、本件事故と左腕部疼痛症状とは、因果関係がないものと認める。
「ところで、被告は、休業損害及び将来の逸失利益算出の基礎となる被告の収入を一か月四八万〇、一一五円と主張し、三陽理研サービスにおける販売員としての収入裏付けのため、<証拠>を提出する。
しかしながら、<証拠>によるも、被告の主たる収入は明治生命からの給与収人であるのに、<証拠>によれば、(株)カナベライフサイエンスに昭和五七年五月から同社が閉店した昭和五八年二月まで販売員として勤務した際の同社における被告の収入が平均月収で三〇万円を超過しており、昭和五八年二月から販売員として勤務していた三陽理研サービスでは、平均月収三四万〇、一六二円余もあつたこととなり、そのこと自体不自然であるうえ、<証拠>の作成経緯をみると、<証拠>によれば、被告が訴訟代理人事務所で陳述したものを同事務所事務員が筆記し、これを証明者方へ持参して署名を得たというのであつて、<証拠>そのものが、帳簿等信用性のある書面に裏付けられたものに基づく証明文書でないうえ、(株)カナベライフサイエンス及び三陽理研サービスは右証明文書署名時にはすでにその業務を停止していることを考えれば、右証明文書の信用性が乏しく、また、被告の右陳述もとうてい信用できないことを考慮すれば、これに基づき被告の事故前三か月の平均月額収入を求めることはできない。しかも、<証拠>によれば三陽理研サービスも、昭和五八年一二月から休業状態となつていることも認められるのであるから、被告の健康マット販売員としての地位そのものも不安定であつて不確定要素を秘めている事情もうかがわれ、そうすると、健康マット販売員としての収入の全てを被告の逸失利益算定の基礎とすることもできない。
一方、<証拠>によれば、被告が休業した期間中も被告は明治生命外務員として集金業務のみはこれを行ない、同社より集金手当を支給されていること、及び右休業期間中も被告に対し成績手当が支給されていることが認められるものの、右成績手当は事故前の被告の新規契約成績に基づいて支給されているものであつて、本件事故により休業を余儀なくされたことにより、休業期間経過後の再就労の際には休業期間中に新規契約業務が遂行しえなかつたことによる同手当の減額が予測される性質のものであるうえ、右集金手当については、一か月平均七、二〇〇円程度が支給されていることは認め得るものの、一方、被告は、事故当時、前記認定のとおり、明治生命における外務員のみならず、三陽理研サービス、ハッピーファミリーの各販売員として稼働していたことが認められるのであるから、休業期間中に明治生命で支給された集金手当を総額としての休業損害より差引いても、被告の事故当時における逸失利益算定の基礎となる平均収入としては、少なくとも、昭和五八年度賃金センサス被告と同年代女子労働者平均賃金程度の収入を得ており、これを逸失したものと認められる。従つて、前記のとおり被告の逸失利益を算定した。 (坂井良和)